« 「新しい私へ」と向かっています | トップページ | 年頭所感2021~生活基盤を最重要事項に。その上で生きる目的を明確化する。 »

2020/11/24

結論:死を迎えることのできる住まいは、よりよく生きるための住まいなのである。

126898587_369387144125179_63117485138580

いよいよ晩秋となり、師走の「し」が見え隠れするように。
先週までは暖かい日が多く、今年は秋を長く感じられたように思う。

そんな麗らかなある日、とあるメーカーの女性が初めて営業にみえる。

名刺交換が終わるやいなや
「さて、先生、HPのプロフィールで見たのですが…」
彼女は同じ大学出身だとおっしゃる。

学年も3つ違いであるので、どこかで会っているはずだ。

…そうそう、当時の建築学科は6階に製図室があり、
EVもなくて、階段での往来、女子トイレも3階にしかなくて…
研究室に積まれた製図台で寝起きし、そこで炊事をし、学校近くの銭湯に行き…

もう、あたかもオンナであることがいけないことのような
いやいや、オンナであることを思い出してはいけないような
そんな環境であったけれども、
それがまた愉快でもあったね、という昔話にハナが咲く。

しかし、今、彼女にも娘がいて、私にも息子がいる。

さらに「自宅で死を迎えることのできる住まい」の大切さを
S教授の1年生の最初の住宅設計の講義で教わったね、と。

数年前、先生のご自宅での葬儀に出席し、
先生の棺を担ぎ、ご自宅から運び出した彼女は、
運びながらも、再び目を開けることのない先生に向かって

「いやぁ、先生、めちゃくちゃ棺が運びづらい設計なんですが!」と言いましたわ、と。

「それは、設計がいけませんわ」な~んて。

そんなことを、笑って言えるほど、
気さくで愉快で優しかった先生のご自宅の記憶がよみがえる。

私も就職したての頃、
女子大生ブームでチヤホヤされた学生の頃とは打って変わり
男尊女卑(今は死語?)の実態に直面し
自分の将来について真剣に悩んでいた。

その時、学生時代の友人と共に
先生の箱根のご自宅に伺い、清流釣りや食事をご一緒させてもらい、
元気を取り戻すことができた一人だ。

ということもあり
私にとって大学1年生の時のS先生の授業が一番心に残ることとなる。

授業中、はじめて「死」について思案したとも言え
また、はじめて「生きること」に真摯に向き合ったのだ。

それから私は、暇を見つけては、哲学書をむさぼり読むことになる。
そして、思想をカタチにしたいと思い、出された課題にぶつけていった。
他の講師陣ともディスカッションを繰り返した。
ある講師に、
「君の言ってることはすごいことだ。素晴らしいよ。でもこれをカタチにすることができるのか?」
と言われ、悔しさあまり、EVの無い校舎の屋上で、涙が枯れるまで泣いた。
そして、決心した。「いつか必ず作ってみせる」と。

授業として建築の設計を学習するべくの学生生活であったが
自分の建築のテーマを「よりよく生きるための空間の創出」として
哲学と心理学を独学し、多面的に追求し続けた。

あれから30年経った今でも、ひとつもぶれてはいない。
暇をみつけては、哲学書などをむさぼり読み思惟する。
しかし、まだまだ、死はともかくとしても「生きる」ことすらわからない。

ただ、実生活を通して子供を産み、育ててきた中で
なんとなく、腑に落ちるキラキラと光る優しい一筋の光を見つけたようには思う。

そして、今までご縁をいただいた施主さんも皆、
「生きる」ことに真剣でそしてそれを楽しんでおられるのを見ると
書籍から学ぶことはできない、
仕事の中にこそ、金色に光る美しい光がたくさんあるように思う。

「私はあの時の想いをカタチにできているのだろうか?」
日々、自問自答しながら、今日も一本の線を決める。

死はいつ訪れるかわからない。
そして、
幸せとは、幸せな死を迎えることではないかと。

結論:死を迎えることのできる住まいは、よりよく生きるための住まいなのである。

生と死。
生は死の中にあり、死は生の中にある。
離反することはできない。

きっと、日々の曖昧模糊な中の優しい光が答えなのだ。

だからこそ日々、素敵な方々の仕事をさせていただけることに、心より感謝している。









|

« 「新しい私へ」と向かっています | トップページ | 年頭所感2021~生活基盤を最重要事項に。その上で生きる目的を明確化する。 »

わたしの設計心得」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 「新しい私へ」と向かっています | トップページ | 年頭所感2021~生活基盤を最重要事項に。その上で生きる目的を明確化する。 »