建築の本質は「間」を設計すること
どこからか春の芽吹く香りがして、 景色を見上げるとそこかしこに桃色の彩りが添えられるようになりました。
ご無沙汰しておりました。今年に入り、毎日のように違う県に出張に行き、違う人々とお仕事をさせていただくという日々を過ごしています。
忙殺されないようにと、常に一定のリズムで自分に向き合い、振り返る作業をしております。私の場合は月(moon)のリズムに合わせていますので、2月26日の新月の日に、過去14日間の振り返りを行い、向こう2週間の計画を立てました。
振り返りをおこなっていくことは、自分の精神性を高めることと、感情を客観的に捉えたり、また身体の調子を整えること、この三位一体をケアすることなので、とても重要な時間です。もう、13年続けています。
3つのバランスをとることで、潜在意識から沸き上がってくるインスピレーションが生まれます。今朝も朝5時にパチっと目が覚め、降りてきましたので、書き記したいと思います。
テーマは
【建築の本質は「間」を設計すること】
2001年に事務所を設立した当初からとても大切にしていることです。もっと言うと、建築に目覚め、学生の頃から持っていた思想です。
こちらは私が独立するきっかけとなった作品。
今朝、竣工写真を出してみると、写真が少しセピア色に変化していました。生まれたばかりの下の子をだっこひもでだっこして、竣工検査に立ち会いました。かれこれ16年前。
メインは、階段下に置かれているグランドピアノ。最優先事項です。
そう、「ピアノが在る」 が最初にあった。
そこで、こう発想していきました。
ピアノのために「無い」をどのくらい創るか?
しかもこのピアノはドイツ製。とても存在感が強い。だから大空間が必要でした。
横方向も上にも。
吹き抜けになっていますが、
「吹き抜けっておしゃれじゃない?」という価値観で作ったのではないのです。
そう
「無い」 が必要だった。 から。
5,45mの立方体のプロポーションがピアノに必要な空間でした。
出来上がって、面白い結果も生まれました。
それは、音響が抜群によかったのです!
私は確信しました。
人間も含めた動物に自分のテリトリーがあるように
モノにもそれぞれ必要なテリトリー=「間」
を持っていることを。
さて、こちらは玄関。4畳ほどの広さがあります。
なぜかというと、
正面に見えるピクチャーウィンドウには、
庭園の中心にあるこのモミジが鎮座しているからです。
窓越しのモミジを活かすために「無い」空間を作るのです。
つまり、窓から見えるモミジのテリトリーを尊重すること。
写真を探してみると、昔掲載された雑誌にありました。
これはポーチからのアングルですので、約6畳くらいの広さがあります。
玄関扉をガラス張りにしたのも「無い」を創るためです。
ガラス張りでも外にはもうひとつ扉があるため、プライバシーは確保されています。
どこが扉かわかりますか?^^
人間はいつものクセで「在る」ものだけを見ようとします。
どうしてかというと、
人間が脳で、認識するために使われている道具が「言語」だからです。
但し、「言語」は「在る」ものに対するものにしか使うことができません。
それが「言語」の限界です。
だから、「空間」を創る建築は説明するのも難しいですし、理解することも難しいのです。「建築は芸術の頂点である」と言われているのは、この要素を鑑みた結果でしょうか。
我々建築家は、おそらく皆さんから見ると、目に見えるモノを設計しているように捉えられているかもしれませんが、本当は、「間」「空」を見ており、「空間」を設計しているのです。
それができるのが本来の「建築家」であり、その審美眼から手を通して手がけられるのが本来の「建築」であるといえるでしょう。
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