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2009/09/20

美しき時の調べ~青春の章

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 先日の建築家展に芸大を目指しているという学生が見に来た。その彼が夕方からの懇親会の席での話題となった。なぜかというと、彼の顔がギリシア彫刻のように美しい顔立ちをしていたから。またある人は横にいた彼女がとてもかわいかった…と。

 

2日目の終盤に差し掛かってふたたび現れた彼はひととおり会場内を見た後、ゆっくりと私に近づいてくる。

そして美しいディテール見本のような彼のふっくらとした唇から出てきた言葉は

「多田さんが建築をやっている上でのポリシーは何ですか?」

的を得た質問。とび色をした澄んだ瞳でじっと見つめられると一瞬時間が止まったような感覚になる。

 

 

私は答える。

「直感で感じ、心に描いた空間をこの現実に創りあげることが出来るという確信」

この答えを耳にした彼は一瞬ひるんだが、目に好奇心という輝きが増した。おそらく想定外の答えだったのだろう。

「かっこよすぎる……でも、どうしても壁にぶちあたるでしょう。そんな時はどうしてますか?」

またもやストレートな質問。力強いストレートで入ったサーブを同じようにストレートなレシーブで返すセンス。その強さは彼の恵まれた美しさゆえか。

「旅。創造の旅。心の中で旅するのよ」

「例えば?」

「そうね、瞑想したり自然の中で植物と話しをするのよ、そしておいしいものを食べたり美しいものを見て感動するの」

目をくりくりさせ長いまつげをしばたきながら、大きくうなづく。好奇心と少しの不安のある若者の目は今故郷の母親にであった時のようなやさしい安堵で満たされている。

「ありがとうございました。よい勉強になりました」とふかぶかとお辞儀をして去っていった。澄み渡るエーゲ海のような爽やかな空気がそこに残る。

 

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